レッスン

MTGのトーナメント・ロジスティクス テキスト

トーナメント・ロジスティクスとは、中~大規模のマジックのトーナメントにおける様々な実務的な(例えば、シールドのデッキ構築のために着席させる、結果記入用紙を回収する、テーブル番号を準備するといった)場面でよく使用されるフレーズです。このモジュールでは、これらのタスクに対して、成功のためにどう準備すればいいのか、また、イベントを成功させるための良い方法を説明します。

これからお話しすることを簡単に説明します。

イベントの準備で使用するツールについて、イベントの準備の仕方、効率的にイベントを開始する方法、そして各ラウンドの始め方と、終わらせ方です。

最初に、トーナメントを進行するために必要となるツールについてお話ししましょう。

当然、私たちには、ウィザーズ・イベント・レポーター(WER)か、イベントを適切に報告するためのソフトが入ったパソコンが必要です。加えて、結果記入用紙や対戦の組み合わせを印刷するためのプリンターや、対戦の組み合わせを掲示する方法が必要です。場所によっては、スクリーンに対戦の組み合わせを表示することができます。しかし、ほとんどの場合では対戦の組み合わせを壁かボードにテープで張ることになるでしょう。簡単に取り除くことができ、壁へのダメージも少ないマスキングテープなどが推奨されます。

結果記入用紙を切るためのカッターや、テーブル番号、試合時間を表示する方法なども必要です。

テーブル番号には、紙やプラスチックで作られた三角形のものや、リングに挟んで使用する板状のものなど、さまざまな種類があります。

通常、これらのツールはイベントの主催者によって用意されます。なので、主催者とは(その会場に不慣れな場合には特に)、事前に確認をしておくべきです。

これでロジスティクスの準備に移れます。転ばぬ先の杖、ですね。

もし、あなたが新しい場所や新しい種類のイベントを運営するなら、開始前に確認してほしいことがいくつかあります。それらの多くは主催者に聞く必要があります。例えば、賞品がどのように設定されているのかを確認する必要があります。もしプレイヤー数に応じて変動する場合には、どう変動するのかを知っておくべきです。また、参加者数に応じた、ラウンド数を行うのか。それとも固定のラウンド数を行うのかも確認するべきでしょう。個人的には、多くのイベントでは3ラウンドを行うことが好ましいです。イベントに遅刻してきたプレイヤーをどう扱うのかについても決めておく必要もあるでしょう。主催者はしばしば、そのプレイヤーをイベントに追加することを望みますし、我々もそれが理想であると思っています。通常、構築イベントでは遅刻したプレイヤーはラウンド1を負けたものとして、ラウンド2から参加することができます。シールドのイベントでは、構築のための時間が短くはなりますが、デッキ構築の時点でも参加することができます。ブースタードラフトのイベントでは、残念ながらそれに参加することができません。なぜなら、ドラフトは構造的に後から参加することができないからです。

他にも、話しておくべき重要なこととして、イベントの受付方法についてがあります。登録の前にプレイヤーはDCI番号を用意しておく必要がありますか?あなたか、いるのであればスコアキーパーが名前とDCI番号を大会の運営ソフトにできるだけ早く入力しておくことは重要です。最後にやって欲しいことは、イベントの2分前に、入力するプレイヤーのリストを用意しておくことです。これは、イベントの開始前に多くのプレイヤーをDCI番号作成のために呼び出さなければならない場合などに、特に必要になります。具体的な計画については、場所や経緯によって変わりますが、受付については必ず話しておきたいです。

この話し合いは、主催者が疑問点を聞くいい機会でもあります。特に、主催者がイベントに不慣れな場合には、トーナメントの基本を説明することで、懸念を和らげることができます。新しいイベント主催者の場合、この講座で出てきた多くのものを考慮していない可能性があります。ですので、これらの物品に関してわからないことや、不明瞭なことについては提案してあげてください。

イベントについての情報を準備して、必要なツールが使用できることを確認したら、イベントの当日に来て、開始前の設営をしましょう。プレイヤーが到着する前に、できる限りの設営をするようにしましょう。イベントの前、プレイヤーの質問に答えるまでにどれだけの時間がかかってるか、素直に驚かれるかもしれませんね。

テーブル番号の準備は、トーナメントの設営において最初にするべきことです。時折、プレイスペースに既に用意されていたり、店員が用意してくれていたりもします。ですが、通常、それが正しく準備されているかを確認するのはあなたの仕事です。自分で設営をし、部屋や道を歩いてみることは、問題を起こる前に察知するのに有効な方法です。

場所によっては特別な理由により、専用の設営が必要になりますが、多くのプレイスペースではテーブルを1列に並べて、テーブル番号を使うことによって簡単に設営ができます。この設営では、それぞれのテーブル番号で2つのテーブルを示します。例えば、テーブル1とテーブル2は同じ札やテントタイプのテーブル番号の違う面で示されます。このテーブル番号は、イベントで使用する最初の2卓の真ん中に置かれます。次のテーブル番号は3番と4番なので、テーブル3とテーブル4の間に置かれます。これは、1つのテーブル番号につき4つのイスをが必要であることを意味します。このような考え方は、間隔を詰めすぎないための簡単な方法です。結果として、2人のプレイヤーが同じ席に座ろうとします。気を付けてほしいのは、チーム戦のイベントでは1つのテーブルに各チームが座るということです。なので、双頭巨人戦のイベントでは2倍のスペースが必要ですし、3人チーム戦では3倍のスペースを必要とします。これは、一般的なシールドのプレリリースイベントを運営する際、その後に双頭巨人戦のプレリリースを行う場合には、双頭巨人戦のイベントの前にテーブル番号を変更する必要があるということです。

テーブルの設営において、他に注意してほしいことは、1列のテーブルの両側に奇数個のイスがある場合、いびつなテーブル番号配置になるということです。なので、例えば1列に5個のテーブルまたは、イスが1テーブルに5個ある、といった2列のテーブルがある場合などには、最初の2つのテーブル番号はテーブル1からテーブル4までの適切な場所にあります。ただし、3つ目のテーブル番号はその列の端に置かれ、テーブル6を探すプレイヤーを混乱させてしまいます。

次に、対戦の組み合わせを掲示する場所を決めましょう。もしあなたが、イベントが定期的に開催されている店舗やその他の場所で運営をしているのであれば、掲示に適した場所があるかもしれません。聞いてみてください。対戦の組み合わせは、簡単に行ける場所に掲示するようにしてください。プレリリースのような大規模なイベントなどで、参加人数が多い場合や室内が込んでいる場合には、複数の対戦の組み合わせを掲示してください。工夫したり、あなたのイベントのニーズを予想してください。もし、なにか掲示物を印刷したり、掲示したりする必要がある場合、イベントの開始前がベストなタイミングです。それは、例えば、賞品についてや、特別なお知らせなどこのイベントでプレイヤーに知っておいて欲しいことなどです。それらのベストな掲示場所は、通常、この後あなたが対戦の組み合わせを掲示する場所の近くです。

最後に、リミテッドのイベントでは、プレイヤーは基本土地を入手する必要があります。多くの場合、デッキに必要な基本土地は室内の数ヶ所に設置された、ランドステーションから得られます。多くのプレイヤーが比較的短い間隔で基本土地を取りに来るので、これは混雑の潜在的なボトルネックです。大型イベントでは、対戦の組み合わせと同じように、複数のランドステーションを用意するのがお勧めです。各土地タイプごとにソートされたランドステーションは効率的です。これらの基本土地は、主催者がWotC社や他の代理店から受け取った後に、ソートする必要があるので、そのための時間をスケジュールに組み込んでおく必要があります。

次に、リミテッドイベントでの準備物についてお話ししましょう。プレリリースイベントでは、これはとても簡単です。店舗には「プレリリースキット」という小さな箱があり、プレイヤー達は基本土地以外の必要なものをすべて受け取ることができます。キットに入っているプロモーション・カードもデッキに入れることができる点に注意してください。セットによっては、キットには複数の種類(通常、特定の色の組み合わせです)があります。その場合には、主催者とどうやってプレイヤーが使用するキットを選ぶのか、またどうやってプレイヤーにキットを配るのかを必ず確認してください。

その他のシールドのイベントでは、ブースター・ボックスを開封してパックを配布する必要があります。各ブースター・ボックスには36個のパックが入っており、プレイヤー6人分となります。これを覚えておくと、イベントに必要なボックスの数がすぐにわかります。時間節約のために、事前にボックスのシュリンクを取り除いて、配りやすいようにパックを6個ずつにまとめておくことができます。ドラフトイベントでも同じように準備ができますが、各プレイヤーに必要なパックは3個であり、1つのボックスで6人ではなく12人分です。

テーブル番号、必要であればランドステーション、対戦組み合わせの掲示場所などの準備が終わったら、イベントを行うのための作業の大部分は終了です。中~大規模イベントの多くはプレリリースなので、シールドのイベントを運営するための方法が使えます。その他のイベントも基本的にほとんどシールドのイベントと同じ方法が使えますが、構築のイベントは必要な準備がこれよりも少なく、ドラフトの場合はデッキ構築の前にドラフトをする追加の手順が必要になります。

受付が終了したら、デッキ構築のための座席表を印刷して掲示しましょう。可能であれば、イベントの最後まで対戦の組み合わせを掲示する場所に座席表を掲示するようにしてください。これによってプレイヤーがどこへ情報を見に行けばいいのかがわかり、後のラウンドで楽になります。座席表が掲示されたことをアナウンスし、プレイヤーが着席した後はプレイヤー・ミーティングを行ってから、パックやプレリリース・キットを配布してください。一見これは非効率なように思えますが、一般的に、すべてのアナウンスが終わるのを待ってからプロダクトを配るのがベストな方法です。人間の性質として、あなたのアナウンスを聞いてる人々も、プロダクトが配られた後はそれに耳を傾けることをやめてしまいます。

プロダクトを配り終わったら、全員がパックやプレリリース・キットを持っているかを確認してください。ここで気を付けてほしいことは、「皆さん、自分のパックは持っていますね?」とは聞かないでください。なぜなら、「持っています」という声が持っていない人の発言を聞こえにくくしてしまうからです。代わりに「パックをもらっていない人はいますか?」と聞いてください。もし全員に問題が無ければ、静かになるでしょう。しかし、もしプロダクトを受け取っていない人がいれば、そのプレイヤーは手を挙げ、そのことを言うでしょう。全員の準備ができた後は、構築時間がどのくらいあるかを伝えて、タイマーをスタートさせてください。通常、それは30分です。もしタイマーが見えるところにない場合は、プレイヤーが確認しやすいように構築終了時間をアナウンスするとともに、座席表の近くにその時間を書いて掲示してください。例えば、「今は10時15分です。デッキ構築時間は10時45分に終わります」と伝えてるとよいでしょう。この場合、時々残りの時間についてアナウンスをするべきでしょう。もしタイマーが無い場合には、各ラウンドの開始でもこのようにするべきです。

デッキの構築が始まったら、そこら中に剥いたパックの袋が出るので、ゴミの回収を始めてください。私のイベントでは、プレイヤーに、カードの整理を始める前に6つすべてのパックを開封するように伝えています。そうすることによって私や他のジャッジが素早くゴミを回収することができます。この時点や、イベント全体でのごみの回収はトーナメント・ロジスティクスにおいて重要なことです。テーブルにゴミを残したままにしておくと、プレイヤーはさらにゴミを置いていきますし、カードやダイスをなくしやすくなります。なので、歩き回って、ゴミを素早く、何度も回収してください。

デッキ構築時間は、この時点でイベントをドロップしたいプレイヤーがあなた(もしくはいるのであればスコアキーパー)にそのことを伝えるいい機会です。時々、特にプレリリースではプレイはせずにカードだけ欲しいプレイヤーがいます。なので、そのプレイヤーはパックを手に入れた後はドロップをします。そのプレイヤーをラウンド1の開始前にドロップさせることによって、マジックをプレイしたいプレイヤーが、そのプレイヤーと当たってしまったり、対戦相手がいない、といったことを防ぐことができます。

プレイヤーのデッキ構築が終わった後は、第1ラウンドの開始です。座席表が掲示されていた場所に、対戦の組み合わせを掲示して、そのことをアナウンスしましょう。プレイヤーが着席した後は、試合時間が50分であることと、準備ができたら始めてもいいということを伝えて、タイマーを動かしましょう。対戦の組み合わせを掲示する前に結果記入用紙を切っておきたいと思うかもしれませんが、あなたが一人で運営している場合、最初にラウンドを開始するべきです。そのほうがより効率的ですし、結果記入用紙を切る時間はラウンドが始まった後にたくさんあります。

結果記入用紙はトーナメントにおいて重要な部分ですが、とても小規模なイベントにしか参加したことが無いようなプレイヤーにとってはなじみが無いかもしれません。結果記入用紙は、誰が勝利したのか、いくつのゲームがプレイされたのか、どちらのプレイヤーがドロップしたのかがプレイヤーによって記入されます。プレイヤーは試合が終わったあとスコアキーパーかジャッジに提出してきます。結果記入用紙を使用せずに結果を口頭で伝えてくるプレイヤーもいますが、そのプレイヤーには結果記入用紙の説明と、このような規模のイベントではイベントを効率的に運営するうえで必須であるということを伝えてください。

デフォルトの結果記入用紙は「ペーパーカッターを使用」になっています。これは、ペーパーカッターを使用して、すべてのページの一番下の列から切り取ると、その束はイベントの最後のテーブルからの順番となっています。新しい一番下の列を切り離してこれに重ねていきます。その結果、テーブル1から連続した番号の結果記入用紙の束が出来上がります。一般的なペーパーカッターは10枚程度しか同時に切ることができないので、超大型のイベントでは、切る前に複数の束に結果記入用紙が印刷された紙を分ける必要があります。また、結果記入用紙を切る前に上下の余白を切り取ることも、結果記入用紙を同一の形にするための良い方法です。

結果記入用紙は、イベント中、各テーブルに配る必要があります。結果記入用紙を渡す際には、できる限りプレイヤーを混乱させないように、プレイエリアの真ん中ではなく左右の端に配るようにしてください。練習すれば、各ラウンド、短時間で結果記入用紙を切って、配ることができるようになります。

ラウンド中は、ウォッチマジックをしたり、質問に答えたり、飛び出ているイスを戻したり、ゴミを回収したりと、やることがたくさんあります。もしスコアキーパーがいない場合には、各ラウンドに何回か、結果記入用紙を回収し、その結果をイベントレポーターに入力する必要もあるでしょう。

試合が終わってから次の対戦の組み合わせが掲示されるまでの時間、プレイヤーはただ待っているだけになってしまうので、この時間は可能な限り短くしましょう。ラウンドが終わって次のラウンドに移るのはとても重要なことであるとともに、ロジスティック的にも工夫のできる部分です。ラウンドの終了を早めるためにできることを見ていきましょう。

ラウンド終了の5~10分前には、持っている未入力の結果を入力してしまうべきです。そうした後、まだ結果記入用紙を持っているプレイヤーがいないか、歩き回って各テーブルを確認してください。もし、試合は終わっているけれども結果記入用紙を持っているプレイヤーがいたら、結果記入用紙に記入をするようにお願いして、回収してください。テーブルを確認し終わったら、今回収してきた、もしくはその間に提出された結果記入用紙を入力してください。

素早く作業ができたなら、試合終了の数分前には、画面に結果の一覧が表示されます。注意しつつ、プレイヤーにラウンドの終了をアナウンスしてください。もし、試合時間が終了した後の経過時間を計測できない時計を使用している場合には、経過時間を把握しておいてください。そうしておくと、(プレイヤーが試合中にトイレに行った、質問に答えるために多くの時間を時間を使ってしまったなどで)延長時間が出ているプレイヤーがいる場合、適切な時間をはかることができます。

これらを終えて、試合時間の終了を告げた後は、まだプレイしているテーブルをチェックしましょう。そのゲームを見つつ、通常の試合時間の場合と同様に、適切でない時間を使っているプレイヤーにはプレイスピードを速めるように言いましょう。そのテーブルから結果記入用紙を回収したら、他の終了していない試合に向かってください。すべての試合の結果記入用紙を回収したら、コンピューターのところへ戻って結果を入力してください。もしまだ結果が入力されていないテーブルが表示されているにも関わらず、プレイしているプレイヤーがテーブルにいない場合には、そのプレイヤーを呼び出しましょう。もしそのプレイヤーが結果記入用紙をすでに提出した、もしくはなくしてしまったと言う場合には、プレイヤーの言う結果を入力することになりますが、その前に本当にその結果記入用紙を持っていないか、誤って他の結果を入力していないかを確認するべきでしょう。次のラウンドが始まってしまってから修正するよりも、ラウンドの終了時に修正するほうがよっぽど簡単です。すべての結果が集まったら、WERで次のラウンドを作成して、ラウンド開始の手順を繰り返しましょう。