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ジャッジとしてのブランドを構築すること

レベル3ジャッジ、ロブ・マッケンジー

そもそも、ブランドとは何でしょうか?

基本的には、ブランドとはあなたの評判のことです。手では触れられない、他者があなたについて思うこと、他者があなたがこんな人だろうと考えることすべてを合わせたものです。

非常にぼんやりとしていて、気にかける必要のないようにも思えるでしょう。

ですが、それについてお話しようとしています!

このプレゼンテーションの話題は、ジャッジ・コミュニティでのあなたのブランド/評判をなぜ育てなけれないけないのか、だれがそれ気にするのか、いつブランド/評判に影響が与えられるのか、そのときに他人からの見られ方を変えるためにあなたに何ができるのか、です。

さて、なぜ評判を気にするのでしょう?

他人が自分をどう見るかが気になるのは何故でしょうか? なぜ、成り行き任せにしないのでしょうか? 他人があなたについてとやかく言う前に、正しい行いをしようとするのは何故でしょうか?

自分の世界は、自分の周りの物事すべては、他者によって規定されるからです。

自分の世界をうまく形作れれば、境遇や環境の改善に大いに役立ちます。車の修理や大工仕事を覚えることに似ていますね。人間がもっぱら他人とやり取りをしているような世界では、これが武器になります。

自分の世界を自分で動かそうとすることは建設的なことです。世界を自分で動かそうとすることは、あなたを一人の人間として形作ります。あなたが世界を変えれば世界があなたを変える、そういった相互作用があるのです。

なるほど、わかりました。しかしこれは、自分が変わらなければならないという意味です。何故でしょうか?

悪事を働いたり、人を操ったり、嘘をついたりするのは、目指すところではありません。

善行を行い、そういった良いことを他者の目に見えるようにすることこそが目標です。

あなたが行いのなかで変化を起こし、次にそれを引き継ぐことであなたが良い行いのモデルとれば、建設的です。

もとより、自己の変化と改善は、ジャッジ・プログラムの一端をなします。

世間的にもそうすることは概して良いことであり、そうすることで得られるスキルはイベント運営特化のものよりも、はるかに大きなものです。

ブランドを気にするのは誰でしょうか?

あなたの行いやあなたが自分をどう見せているかを、他人は結構、見ています。もっともらしい答えは、「あなたが有意義な相互作用を持っているすべての人」です。ただし、ジャッジ・ブランドという観点からは、鍵となる人物たちがいます。

トーナメント主催者は、あなたのブランドを見ています。なぜならばあなたがイベントの品質と公正さを担保するかが気にかかるからです。あなたのブランド力が強くなれば、イベント主催者は自身の評判を高めるためにあなたに頼れますし、そうしたくなるでしょう。ブランド力があなたに仕事を与えるのです。

ジャッジたちも、あなたと共に働くので、気にします。仲間を成長させたり、目標達成を手助けしてくれたり、イベントをより楽しくするという評判があれば、ジャッジたちはますますこぞってあなたと働きたがるでしょう。あなたのブランド力が高まれば、自分が担当のイベントにジャッジたちを引き込むことができるでしょうし、自分個人の目標の支えとなる人の繋がりを作ることができます。

プレイヤーもです。公平性と自信に満ちた対応で評判を築けたなら、プレイヤーたちはあなたの裁定を信頼し、あなたのイベントにますます参加することになるでしょう。プレイヤーの間でのあなたのブランド力が高まると、あなたの裁定に上告することは少なくなり、あなたをより信頼し、あなたをイベントで見かけることやあなたがジャッジ・コールをとることに前向きな感情を抱くでしょう。あなたがプレイヤーに不利な裁定を出しているのに、そのプレイヤーが前向きな感情でいてくれるのは、本当にありがたいことです。重たい処分を言い渡したことに対して真剣な感謝が返って来たときは、どれだけ印象深いことでしょうか。人々から多大な信頼を得られれば、彼らにとって不利なことでも、受け入れてもらえる。そうなれるのが、プレイヤー側へのブランド構築の本当のゴールです。

マジックを取り巻くメディアやカバレージもあなたのブランドを重視しています。メディア関係者との関係が良好で、彼らの間で評判高いなら、質問を受たり、専門家としての意見を提供するために招かれたりするでしょうし、もっと広い範囲で信頼されもするでしょう。

マジック・プレイヤーでなくても、地元のゲーム・プレイヤーはあなたを「あのマジックのジャッジ」としてよく知るでしょう。ゲーム・コミュニティ全体に評判がいきわたると、新たな交流が生まれます。幅広いゲーム・コミュニティとのつながりを持ち、信頼できる人物として知られると、幅広い環境で優秀な人々と仕事をするあらゆる機会が見つかります。

なるほど、みんな私を見てるのですね。では、違いを作れるは実際いつでしょうか?

そっけなく答えれば、イベントにかかわっているときならいつでも、です。作業をしているとき、ジャッジ・コールをとっているとき、アナウンスをしているとき、または単に試合を見ているときなど。プレイヤーとして参加しているときも、マッチ中のやり取りの行い方、ジャッジの呼び方、ストレスにどう対処するかが、ほかのプレイヤーの目にさらされます。そうでなくても、ゲームをしているときや、マジック界隈につながるコミュニティの中にいるときには、あなたの取る行動はジャッジ生活に反映されるでしょう。

最後に、これは好みが分かれるところですが、ソーシャル・メディア上でどのようにふるまうかは大事です。荒らしをすることも、クソリプをすることも、何だってできます。組織としてのジャッジ・プログラムは基本的に気にしません。他人が、あなたを取り囲む社会が、気にするのです。挑発することばをかけたり、あなたが道徳的に疑わしいことをしているビデオがあったり、だれかに食ってかかったりしたときに、みんなそれを見ます。みんな噂をします。自分のすることに気を付けてください。あなたは完璧ではないでしょう。あなたは聖人君子ではないでしょう。それでも、「他人がオレをどう思うかは、アイツら側の問題だ」とは考えないでください。書き込みするとき、あなたはコミュニケーションをしているのです。書き込む内容と書き込む媒体に気を付けてください。他人は、あなたの言うことを読めるし、読みたがるし、そうしてあなたについての評価を固めるのだということを知っておいてください。

「気をつける」とか「わかっておく」というのは、どういうことでしょうか? それは、あなたが物事に対してどのようにふるまうかを選べるということです。怒ったり、意地悪くなったり、内にこもったり、嗅ぎまわったりすることもできます。気配りをしたり、プロとしてふるまったり、建設的になったり、積極的に物事に取り組んだりすることもできます。不満を言うことがあるもわかります。つまらないときがあるのもわかります。ただ、どうふるまうかはあなた次第なのです。

これには努力が要ります。話す内容と話し方、両方に気を付けてください。自分と他人とのふるまいや、他人に何をどのように言うかに気を付けるのです。

世間でのふるまいには、意思決定がよく隠されています。あるひとと会うことを選んだり、あるプレイヤーに出した失格について別のプレイヤーに尋ねられても答えないことを選んだり。

そういった選択のそれぞれで、世間でのふるまいの方向性を決められます。

失格処分についての会話を中断させる場合を例に挙げます。邪魔者として見られるか、プロとして見られるかの分かれ目がここにあります。ただ前提なしに「話せません。情報が必要であれば、ウィザーズ・オブ・ザ・コースト社にメールをしてください」というだけでは、あまり信頼は寄せられないでしょう。 「今回はプレイヤーAとBの両方のプライバシーに配慮します。ウィザーズ・オブ・ザ・コースト社にはさらなる調査能力があり、私が失格にしたプレイヤーを出場停止処分にする場合もしない場合もありうるため、詳細については説明できません。私の誤りである場合もありうるので、コミュニティに悪評を流すつもりはありません。詳しく知りたいなら、プレイヤー自身に尋ねてもよいでしょう。または、ウィザーズによる最終判断を含む情報を取得する説得力のある理由があると思うなら、ウィザーズに問い合わせをすることもできます」。こちらのほうがよりよく響きますし、口をつぐむ理由もあるので、尊重されることでしょう。

ひとたび注意を払えば、このような選択肢がたくさん見つかります

では具体的に、どうすればブランドをより良くできるのでしょうか?

他人を尊重し、模範を示すことです。

尊敬は尊敬を与えることで得られます。もし誰かが、あなたとは意見が食い違う行いをしていても、その人の顔を立てるようなやり方で、説明の機会を与えるようなやり方で歩み寄ることができます。とりわけ、彼らが行いをやめるための出口に、あなたがなってあげるようなやり方で。

「ジャッジのジュディさん、あなたはこのジャッジ・コールに裁定を出しましたが、私にはわかりませんでした。もっと詳しく知りたいです。手助けしていただけますでしょうか」。こう言うことで、あなたはジュディさんから助けを得ようとしているように見えます。このようにすることは好まれます。数多くこうすることで、そしてそれが本心であればあるほど、成果を得られるようになります。

信頼を生むには、真実を語ることです。真実が不都合なときでも。真実が不都合なときこそ。

天気予報は信頼されています。天気予報は言い抜けの余地を残して置いたり言葉のあやをつかうことを(あまり)せず、予想される天気が良かろうが悪かろうが事実をただ伝えてくれます。

誰かが、良いことも悪いことも教えてくれてきたならば、その人は真実を教えてくれる人だとして信頼されます。良いニュースも悪いニュースも、肯定的な意見も否定的な意見も、その人は聞かせてくれます。そうすることで、その人が正確な情報を提供するために最善を尽くしているのだとわかるのです。

風通しを良くしましょう。意見と批評を受け入れるのです。もし、もらった意見が不器用なものでも……問題ありません。あなたにできることを取り出し、残りは無視するのです。ゆがめたり、軽んじたり、非難したりはしないことです。

もしジャッジのジュディさんが「あなたのペーパー・チームとしての働きは褒められたものではありませんでした。結果記入用紙を配るのに現場にいなかったのですから」と言ったとしましょう。でも、実際にはあなたはデッキ・チェック・チームだったとしたら……。あなたは所属のチームに悪い印象を与えたのかもしれません。第1ラウンドで結果記入用紙を配ったときに、もうそこには来ないことを伝え損ねたのかもしれません。どんな小さな意見にも理由があります。それが誤解であってもです。もし、「それは自分のせいじゃなくて……」と言おうとしたときには、考え直してみてください。

他者や状況に注意を払いましょう。自分にできることを考えましょう。そして、それを示すのです。頭の中に他者のための場所を用意すると、その人たちを大事に思っていることが伝わります。

完璧な記憶は持たなくてよいです。できることを考え、話すのです。あなたの心がけに、他者は気づきます。

ジャッジのジュディさんが話しかけてきて、彼女が統率者戦が好きなのはわかっていて……しかし、何を統率者に使ってたか、それどころか彼女がどこから来たかすら思い出せないときでさえ、覚えていることは足掛かりにできます。

名前、場所、カードなどを完全に覚えている必要はありません。心がけをすることと、いくらかでも興味を示すことは驚くほど効果的ですし、そうすると、他者はあなたを、気づかいができて魅力があると思うようになります。

何をすべきかわからないければ、ロールモデルを選びましょう。現実にも物語にも、偉大なロールモデルが無数にいます。子供番組の司会者、フレッド・ロジャース。ハリー・ポッターのハーマイオニー・グレンジャー。大統領夫人のエレノア・ルーズベルト。スタートレックのジャン=リュック・ピカード艦長。

こう見られたい、こうふるまいたいというモデルや、偉大で真似したいと思うような人物がいるなら、基本的にそれはお手本にできます。完璧にはなれないですし、そうはならないでしょう。しかし、折に触れて役に立つ便利な思考法です。

まとめ

世間の評判、つまりは他人があなたをどのように見てどのように思うかは、大事なことです。評判は手で触れられるものではないですが、愛、慈悲、正義といった、あらゆるの大切なものごとだって同じです。あなたに影響をあたえる、この目に見えない評判を、いくらか自分で手綱を握ることができます。ジャッジ界でのブランド構築の大部分は、正しい行動をすること、行動を目に見えるようにすること、行動についてうまく説明することです。残りはおおむね、他者に注意を払うこと、自分の取ろうとしている行動や話そうとしている言葉に注意し、そしてそれらをどのように実際に取っているか、話しているかを気を付けることです。