レッスン

MTG:紛争を解決する テキスト

こんにちは。ジャッジアカデミーの「紛争の解決」項目へようこそ。私はSteven Edelson博士です。経営と起業に関する教授で、サッカーの審判とマジック:ザ・ギャザリングのジャッジをしています。

この項目において、紛争とは何か/紛争の種類/紛争の管理方法/紛争の解決に関するあなたの役割といった、紛争に関する様々な内容を取り上げます。まずは「紛争とは何か」ということから見ていきましょう。

提示された現象を理解するためには、まずは最初にその単語を定義するとよいでしょう。「紛争(conflict)」という単語の定義はたくさんありますが、Merriam-Websterの辞書では、次のように定義されています。

原理の対立のような(発散する考え方や利益、または人の)拮抗した状態や行動。一般的には対人関係の対立

この名詞に関連する定義としては、次のようなものがあります。

(何かの義務や責任と対立している誰かの良心のように)相容れないまたは対立するニーズ、運動、願い、または内外の要求に起因する精神的な闘争。一般的には、人間内部の対立。

教授として、私はときどき、両方を取り入れた、よりニュアンスのあった定義を評価しています。そのような定義の一つは、「紛争」とは、”利害、認識、好みが異なる当事者間の相互作用の形態である “というものです。

定義を見てみると、具体的なキーワードがいくつかあります。「紛争」とは、当事者間の相互作用であること。これは、紛争が(通常は)2人以上が何らかの形でお互いに作用することを意味します。これらの当事者は、利益が異なります。関心は、簡単に言えば、個人が特定の状況において何を望んでいるかです。マジックのゲームの状況では、各プレイヤーは、大抵彼らの試合に勝つことを目指してプレイしているでしょう。したがって、プレイヤーの利益は自然にここではお互いに紛争します。

また、当事者たちは、認識に違いがある場合もあります。個人の認識とは、個人が自分の状況の理由付けとして、感覚的な印象を整理して解釈するプロセスです。言い方を変えると、認識というのはその人が受け取った膨大な量の情報を、その人にとって意味のあるパターンに落とし込む方法だと言えます。マジックの対戦中に、一方のプレイヤーが意図的に時間をかけてゆっくりプレイしているとなると、対戦相手からすれば、そういったゆっくりしたプレイで優位を得ようとしていると認識されるかもしれません。ここで重要なのは、人の行動は、現実を客観的に理解しているのではなく、現実が何であるのかという認識に基づいているということです。認識された世界こそが、行動的に重要な世界である、ということなのです。人は現実として認識したことを使って行動を決めるのですが、それが紛争の管理や解決のプロセスに明確に影響を与えているのです。

最後に、こういったプレイヤーたちの好みは分かれる場合があります。こういった概念をテーブルトップのマジックに持ち込むとすると、プレイヤーの使うスリーブやフォイルや多言語のカードを使用するなど、サプライやカードの傾向に反映されていることもあります。タップの角度に現れる場合もあります(90度にタップする人もいれば、45度程度で済ませる人もいるでしょう)。私はそれが、先手後手の決定権にまで及んでいるケースを見たことがあります。こういった好みは紛争の原因となります。

しかし、こういった定義が「紛争」に本質として否定的な意味合いを割り当てるようなものではない、ということは重要なことです。「紛争」は様々な理由からいろいろな形で存在しますが、それは悪いことであるというわけではなありません。しかし、あなたがマジックのジャッジとして活動するにあたって、対人/グループ内/グループ間での相互の関係を管理するのに注意しなければならないことがあります。

「紛争」、特に対人関係に関するものには2つのタイプがあります。
Aタイプ:感情的な紛争
Cタイプ:建設的な紛争

感情的な紛争は、名前の通り個人に依存する話で、衝動的/感情的な反応を引き起こしてしまうものです。関係の紛争は対人関係の紛争が含まれます。これらは頻繁に対人関係の軋轢を生んだり、将来的な悪影響を及ぼすものです。そして対人関係のしこりとなります。

建設的な紛争は、タスクや成果に基づく話で、名前の通り実りのある結果をもたらすことが多いです。個人が問題解決の手段/スキルを持っていると、こういったタスクや手順の競合はパフォーマンスを上げる結果をもたらすものです。

リーダーにとっての課題は、感情的な紛争を最低限に抑えつつ、建設的な紛争を促すことです。この2つは並行して発生するものであり、認識が異なっていることがわかるとさらに問題が複雑化することがあります。

例を挙げましょう。あなたがジャッジコールをした際、私の裁定が誤っていると理由を含めて私に提示する、というのが建設的な紛争です。しかし、私たちの関係に依存しますが、私はその建設的な批判を、個人的または感情的なものととらえるかもしれません。私の裁定へのあなたの批判を、私への個人的な攻撃と解釈するかもしれません。あなたのメッセージを受け取らずに「あの裁定は〇〇のおかげで欠陥があった…」というメッセージを受け取ることになるかもしれません。「スティーブは馬鹿で下手なジャッジでMTRやIPGを理解していない」というメッセージと受け取られかねないのです。

これはとても極端な例ですが、自分を守るのが人間の本性であり、自分が考えたアイディアや行動を妨げられた場合、それを個人的な批判としてとらえることが多いです。

私たちは、紛争の解決法を学び前に進むために、紛争を解決するための様々なレベルでの解決方法を模索していきます。

ここまでで、広い意味での紛争とは何かという理解が深まったかと思います。では、ここからは私が様々なレベルでの紛争と呼んでいるものについて理解を深めていきましょう。紛争は様々なレベルで発生します。まず最初に、紛争の軌跡というべきものをを見ていきましょう。

紛争の軌跡とは、特定の位置/ポイント/場所です。この文脈において、私が紛争の軌跡を話すときは、紛争が発生する特定の関係に言及しています。紛争は対人関係、つまり二者以上の対人の紛争です。通常、マジックのゲームは2人のプレイヤーが対戦しています。ただし、そこにいる2人(以上)の個人間で紛争が発生する場合もあります。これについては今後のスライドで説明していきます。

紛争は個人の内面に原因があるかもしれません。そういった場合、その人が自分の中に抱えている要素の紛争となります。「紛争」の辞書の上での定義の関連する項目を思い出してください。
「(何かの義務や責任と対立している誰かの良心のように)相容れないまたは対立するニーズ、運動、願い、または内外の要求に起因する精神的な闘争。一般的には、人間内部の対立」
これはあまり対戦したことのないプレイヤーとマジックをプレイするときや、自分のゲーム内の行動に疑問を持った時に起こりやすいです。この種の紛争は、その紛争自体を基に問題を構築し、他の紛争の原因にもなりえます。

次の紛争の軌跡はグループ間、つまり2つ以上のグループの紛争です。
最も直接的なものは、チーム戦のイベントで見られるもので、各チームは対戦相手のチームと紛争しています。また、ジャッジやプレイヤーなどのグループ間で紛争が起きることもあります。
すべての紛争が否定的な内容で起こるわけではない、ということを覚えておいてください。
ここで起こるグループ間の紛争は、お互いによい影響を与えたり、建設的なものである場合も含みます。

最後に挙げるのは、グループ内の紛争です。最も多いのはグループ内の個人間で起きる紛争です。繰り返しますが、最も直接的な例は、チーム戦のイベントでチーム内のプレイヤーが何らかのタイプの紛争を経験している場合です。これは、イベントで裁定を出すジャッジグループ内で、ポリシー等の解釈を巡って紛争が発生するケースもあります。何度でも繰り返しますが、他の形態の紛争と同様に、否定的な意味での経験である必要はなく、建設的な手法となります。

ジャッジが注意すべきもう1つの紛争のレベルに、だれが紛争を経験しているか、という点があります。前の例で挙げたように、明らかにプレイヤー/ジャッジは紛争を経験したことがあります。ただ、マジックのイベントにおいては、紛争を経験したことのあるのは、プレイヤーやジャッジだけではありません。イベント主催者とブース出展者が紛争を経験していることもあるでしょう。これらは、この後で説明する内容が要因として絡んできます。最後に、観客も紛争を経験する可能性があります。例えば、対戦を観戦中にゲーム内のルールミスに気づき、どう対応したらいいのかわからない、というケースがあります。また、あるプレイヤーが別のプレイヤーを応援しているのに気付いている可能性があります。

紛争は様々な要因から発生するものですが、私はその要因を「ストレッサー」と呼んでいます。ストレスとは、感情的/物理的な緊張感です。ストレスは、イライラしたり怒ったり神経質にさせるような出来事や思考を引き起こすものです。ストレスは、課題や要求に対する体の反応です。ストレッサーとは、ストレスを引き起こす要因であれば、どんなものでも当てはまります。さて、誰かのストレッサーを理解することが本当に重要だと自問するかもしれません。しかし、誰かがストレスを受ける理由を知ることは、ストレスを管理し、紛争を感情的なものから建設的なものへ変化させるために役に立つかもしれないのです。

(ゲームとは関係ない)個人的なストレッサーがあるかもしれません。私たちは、マジックのイベントにおける役割の枠組みの外側でも人間としての生活があり、生活の中でストレッサーを抱えているものです。このストレスは、ゲーム外の状況では影響しないかもしれませんが、イベントにおいては紛争の要因となる場合があります。紛争はゲームによって発生したものではないものの、ゲーム中に起きうるものです。ストレッサーがいないにも関わらず、個人ががそういった行動をとってしまうのかは、明確ではない場合があります。

もちろん、ストレスはプレイ中のゲームにも影響してきます。これは、私たちが最も考慮するべきストレスであり、プレイヤーが起こす紛争の根源であるともいえるのです。現在進行しているマジックのゲームにかかわるストレスが原因で紛争が発生した場合、紛争に関して処理すべき「秘匿情報」は少なくなることもあり得ます。そしてジャッジとして、ヘッドジャッジへの上告をされた場合、プレイヤーとの紛争を感じてしまうかもしれません。私たちは、ゲーム内の紛争の当事者となり、紛争を経験することになるかもしれません。紛争の原因を認識することは、紛争に対処するための助けとなります。

イベント、特にラウンド数が多いイベントにおいては、序盤のラウンドに起きたことが原因でストレスを感じることがあります。例えば、あるプレイヤーが1回戦で頑張ってアグロデッキで勝ち切ろうとしていたところに、対戦相手のトップデッキによって敗北を喫してしまったとしましょう。別のプレイヤーはデッキチェック時に〔デッキの問題〕でゲームの敗北をもらいました。また別のプレイヤーは、直前のラウンドでプレイミスをしてマッチに負けたため、最終戦に勝利したうえで、タイブレークで決勝ラウンドに残れるかが決まるため、他の卓の結果に望みを託すことになりました。

こういったすべてのケースにおいて、プレイヤーはプレイしているマッチとは直接関係しない何かが原因でストレスを感じ、現在のマッチで紛争する可能性を秘めているのです。

また、現場にいる人たちは、過去の経験から同じ現場で関わること自体にストレスを感じる場合があります。それは、プレイヤーが別のお店で対戦した際の問題かもしれませんし、過去のトーナメントで、同じ内容の問題なのに別の裁定をジャッジから示されたなど、以前に参加したイベントが原因でストレスを感じているかもしれません。ただ、そういった点は、現在進行中のイベントとは直接的な関係はないものです。

最後に、あるイベントにおける様々なレベルの紛争が、どのようにお互いに関連するかを説明していきたいと思います。まず、紛争の軌跡とは、紛争が発生する上での個人の内面的な問題/対人関係/グループ間/グループ内の関係性を表し、プレイヤー/ジャッジ/イベント主催者/小売業者/観客を含む任意の人数の個人が、紛争に巻き込まれる可能性があると思ってください。それは、現在プレイされているゲームに関係する内容から、まったくマジックと関係しないやり取りを含めてすべてが要因となりうるからです。

こういった異なるレベルの紛争は、常に相互に作用しています。とあるプレイヤーが個人の内面的な紛争を抱えているかもしれませんが、それは個人の内的な紛争です。そういった内的な紛争が、対人関係での紛争やグループ内での紛争につながるような行動を起こしてしまうことがあります。その結果として発生する対人の紛争がジャッジコールにつながる可能性があります。そしてそのジャッジコールの対応内容によって、ゲームやマッチの勝敗が決してしまった場合、その紛争相手は、対戦相手やジャッジ(あなた)、そしてあなたを雇用した主催者にまで広がるかもしれません!

また、そのプレイヤーやジャッジが私生活でストレスを抱えている状況を考えてみましょう。私たちはある領域での紛争を経験したら、それが別の領域には影響しないと思いたくなってしまいます。ですが実際には生活におけるとある領域で経験したストレスは、他の領域へ影響し得るものです。イベントにおいては、プレイヤーがおかしな状況に直面しておかしな反応をしてしまうケースを時々見かけます。これは、私たちが気づかないような要因がストレスの原因となっている可能性があります。ジャッジとして大事なのは、プレイヤーが紛争を経験している間、似たような状況を考えると不自然なほど激しい行動をしてしまう可能性があることを考慮しておくことです。紛争によって得たストレスが「ラクダの背骨を折った、最後のわら一本」であるかのように見えるかもしれません。

ジャッジコール自体が紛争の原因となる場合もあります。とあるルールに関する見解の相違から、プレイヤーがジャッジコールをしたとしましょう。そこで、呼ばれたジャッジが対応しようとしたことが、紛争を引き起こしてしまう場合があります。
例えば、アクティブプレイヤーであるアレックスが、対戦相手のニッキーが説明したルールの解釈について納得がいかなかった場合がこれにあたります。これは建設的な話ではありますが、合意が取れないケースで、両者の間には特に不信感などの否定的な感情はないものとします。しかし、ニッキーは自分の説明に対してジャッジコールをされること自体を否定的にとらえ、アレックスがジャッジコールをしたことで、周りから見たときに自分の評価を落としているように感じられるかもしれません。ジャッジコールを受けること自体を、プレイヤー(特に新規プレイヤー)にとって誠実に対応したことで自分たちが危機に瀕しているような状況に感じられるかもしれません。
こういったことがストレスになることはありますし、建設的な紛争が感情的な紛争に陥ってしまう例と言えます。

これらは、様々なレベルで発生する紛争が相互に影響し合うことを示す一例にすぎません。誰が紛争を経験しているかという点を考えると、ジャッジであるあなた自身が裁定をどのように解釈するべきなのか、あるいはイベントの運営方法に関してほかのジャッジと紛争を起こすかもしれません。また、プレイヤーや観客、主催者、果ては出展者まで、様々な関係者が紛争を起こすこともあるでしょう。もちろん、ジャッジの第一の役割は紛争を管理し解決することであり、紛争に参加することではありません。しかし、時としてジャッジが紛争に巻き込まれることもあるでしょうし。仕事の一部として自然に経験することもあるでしょう。私達を含めて多くの個人が経験したことがあるであろう紛争の内容や原因を認識しておくことは、紛争を管理し解決する上で非常に重要なステップです。

ここまで紛争のレベルの検討をしてきましたが、続いて紛争の管理に話を移していきたいと思います。

次のスライドからは、あなたが紛争に遭遇した際に使える、紛争を解決するための一般的な方法を示していきたいと思います。これは、紛争の当事者としてや、紛争をサポートすることを考慮してのお話となります。

ジャッジとして、私達は一般的には次の2つの役割を担います。仲裁者か調停者です。さて、これは私達ジャッジが行う活動を一般化したものです。アメリカでは仲裁者/調停者という国家資格は存在しませんが、ジャッジアカデミーがマジック:ザ・ギャザリングのジャッジを認定しているように、仲裁者/調停者は(民間の)認定資格として認定を行う組織が存在します。あなたは認定された仲裁者/調停者ではありませんが、仲裁/調停にかかわる技術を利用して、紛争を管理し、解決を目指していくことになります。

仲裁者/調停者の双方は、ほぼ同様の業務を行います。アメリカ労働省はこれらの役割に対して共通する義務を規定していますが、そのいくつかについて、私は義務の内容を拡張しようと思います。まず、仲裁者/調停者は、当事者双方の合意を導くために、紛争に関与する当事者同士のコミュニケーションを促進することを求められます。これは、テーブルでジャッジコールを受ける際にその手順の一部として、プレイヤー全員がゲームの状況やジャッジコールが行われた理由を誰からも阻害されることなく説明する機会を確保するということです。

次に、仲裁者/調停者のいずれであっても、関係者全員の問題点や利害、懸念事項やニーズを明確にします。ジャッジコールの際にあなたがルール的な判断をする前に、あなたは関係者全員に客観的な事実に関する合意を得ておく必要があります。そうでないなら、あなたがそこに呼ばれた要因を明確化する必要があります。問題を明確にするための手法の一種として、プロセスの概要を説明するための話し合いをする必要がある場合もあります。また、正確な情報を得るために、関係者と個別に話をする機会を設ける必要があるかもしれません。ジャッジコールにおいて、あなたはプレイヤーをテーブルから離して話を聞く必要があるかもしれませんし、あなたは(例えばデッキチェックなど)調査をしていて問題を発見した場合、裁定を出されるプレイヤーと話をして結論に至るまでの経緯を話すことは、紛争を管理し、紛争がエスカレートしないようにするために非常に大事なことです。

仲裁者/調停者が結論を出すために、関連法・規制・政策・前例を適用する必要があるのと同様に、ジャッジとして結論を出すためにはマジック・イベント規定(MTR)/違反処置指針(IPG)/総合ルール(CR)を適用する必要があります。(訳注:原文にはCRなし)

このスライドの冒頭でもお話ししましたが、ジャッジという役職は一般的には仲裁者/調停者のうち1つを担っているといえます。私はお話させていただいた中で、両者の共通点を挙げてきましたが、共通点を挙げるのと同じように違いを挙げていきたいと思います。調停者は特定分野の専門知識を持つ公平な第三者です。当事者間に入って紛争の詳細を確認し解決法を判断します。多くの場合、調停者の判断はその判断内容が最終的なもので、当事者たちに拘束力がある判断をするものです。これは、あなたが特にイベントのヘッドジャッジをしている場合に最も多く経験することになります。(あなたがそのイベントで唯一のジャッジであれば、必然的にヘッドジャッジとなるでしょう)

仲裁者は紛争の解決を助ける中立的な立場ですが、調停者と異なり拘束力のある決定を下しません。ジャッジとしてのあなたの役割は、ルールに基づいた決定を下すだけでなく、前述した通りほかのジャッジと紛争したり、他の2名以上のジャッジから意見を求められたりします。あなたの回答が拘束力のないものだとしても、同じようなプロセスの中で彼らが問題を解決するのを助けるために回答をしていくでしょう。多くの場合、仲裁者として行動し紛争の解決を助ける際には、私が次のスライドで示すようなアクティブな聞き取り方法を採用するでしょう。

当事者に決定させるためではなく、プレイヤー/イベント主催者/出展者/観客、そしてほかのジャッジが、紛争に際してお互いに受け入れられる解決策を行うことを奨励するよう紛争回避のための技術を使うことをあなた自身が気づくかもしれません。

このスライドでお話しするアクティブリスニングというテクニックは、すでにジャッジのツールベルトに含まれているかもしれません。紛争の当事者が何を抱えているかを聞くだけでなく、その抱えているものを掘り下げていくことがアクティブリスニングの要点です。アクティブリスニングとは、受動的に話を聞くだけでなく、まず相手の話に十分に注意を払うことが大事です。これは当然のことに聞こえるかもしれませんが、紛争に対応している際には、仲裁者/調停者/当事者が何に焦点を当てて話しているかというのは非常に大事なことです。また、それだけではなく、何を言っているか/どのように言っているかを注意深く聞き取る必要があります。非言語コミュニケーションに関してはこの項目で取り扱う範疇を超えていますが、当事者から示されるジェスチャーなどの非言語コミュニケーションは、当事者が何を伝えようとしているかを理解する上で非常に重要で、これらを理解する能力は紛争を管理する能力にプラスに働きます。

何が起こっているかを観察し解釈することに加えて、すでに言われたことを反映させたり言い換えたりできるようにすることも大事です。これは、受動的に聞くだけにならないようアクティブリスニングを実施するにあたって大事なことです。反映とは、誰かが言ったことを自分が理解していると示すために、そのまま忠実に言い直したり、言い換えを行うことです。同じ内容を言葉を変えて言い直すことで、自分が聞いたことと相手が言ったことが同じであることを確認する機会が増えます。自分が聞いたこと=相手が言ったことにならないようであれば、それは質問のチャンスです。

紛争の関係者に一通り話を聞いたら、判断を思いとどまる必要があります。アクティブリスニングの手順は意思決定を行うものではありません。情報収集の手段であり、紛争の解決に関与して関係者に公平に扱うと示す手段ともなります。また、あなたが相手の主張に対してどれだけ耳を傾けたかは、あなたが下した判断を相手がどのように受け止めるかの重要な要素となります。そのため、あなたは中立的かつ判断をしないように心がけるべきです。事情を聴いている最中の早い段階で誰かの味方になったり、意見を言ったりすることのないよう注意しましょう。

こういったコミュニケーションの手順管理の一環として、その紛争における関係者が自分の立場から話をする機会を得られるようにできます。このスライドに記載されているアクティブリスニングに関する手法を使用することで、まるで自分の声が聞こえたかのように感じるはずです。その「聞こえている」という感覚が、最終的な決断の精度を高めるためにも心理的に非常に重要になります。

アクティブリスニングの最終段階は、明確なコミュニケーションと適切な反応です。もしあなたがルールについての質問を受けたなら、明確な説明がとても大事なものになります。例えば、あなたの裁定の結果が「Alexのクリーチャーは死亡する」というものだったとして、そのことだけを伝えるのは結果だけ見れば正しいものです。ただ、そこにあなたがどういう理由でその結果にたどり着いたかを、明確かつ簡潔に説明することが、当事者がその説明を受け入れてくれるかに役に立つのです。警告やゲームの敗北、マッチの敗北、失格といった懲罰を出さざるを得ない場合、裁定を説明することは、その紛争がきちんと管理されているか、紛争がエスカレートするかを予測する上で非常に役に立ちますし、新しい関係者が紛争に巻き込まれる可能性があります。

最後に、適切な対応をしましょう。アクティブリスニングのテクニックの一つとして、相手のボディランゲージや口調をまねるというものがあります。ただし、積極的に話を聞いてくれるような当事者が何かしら動揺している場合には、これは逆効果になる場合があります。プレイヤーの感覚や感情が不安定になっていることを認識してください。私自身、他のジャッジがプレイヤーに対して「あなたの感情は有効だが、あなたの行動は有効に働いていない」ということを伝えているのを見たことがあります。あなたに対してそういうことが起きたら認めるようにしましょう。

ここまで、紛争のレベルと紛争の管理に使用する方法についてお話をしてきました。この項の最後の内容として、ジャッジの役割と紛争において使えるツールとテクニックに紹介していきます。

ジャッジに求められる役割を話すにあたって、ジャッジは何を期待されているかを状況に応じて異なるものですが、これはここまでに話した紛争のレベルと似たような話になります。まず、紛争の種類が挙げられます。当事者同士が感情的になってしまい、感情的な紛争に分類されるような状況になっていませんか? それとも、当事者は冷静に対応していて、当事者が目の前の課題や問題に集中し建設的な紛争になっていますか? 考慮するべきものはもう1つあり、紛争の原因がそれにあたります。状況を確認した際に、解決しようとしている紛争が、ゲーム内/ゲーム外のどちらに基づいているのかを確認すると、解決しやすくなるかと思います。最後に、誰が紛争に関与し、過去にどのような紛争を経験しているかを知ることも大事です。

ジャッジとしてのあなたの一番の役割は、当事者の心を落ち着かせるようにすることです。あなたが紛争の当事者でもある場合、これは難しいかもしれません。自分の感情を抑えることが重要になってきます。これは、感情的知性を活用することで制御できるでしょう。繰り返しになりますが、感情的知性に関しては、この項目の対応範囲を超える内容となります。このスライドではシンプルに情報量を増やせるように記載しています。感情的知性とは「自分の感情を理解して管理し、他人の感情を正確に解釈し理解し管理する」能力です。

感情的知性の第一歩は、きちんと自分の感情を理解することです。自分の感情を理解できていないなら、他人の感情を十分に理解して管理することはできません。重要なのは、あなたの感情がどのように他人に影響し、他人から見たときあなたの感情がどのように解釈されるか、なのです。

紛争を解決するプロセスにあたり、あなたの役割がどうなるかを考えましょう。その際に、まず一歩下がって「私はこの紛争の当事者の1人だろうか?」と考えてみてください。あなたが解決に取り組む紛争には、あなたが当事者である場合もあるでしょう。そして、そういった紛争は建設的かつ効果的である場合があります。紛争における自分の立ち位置を理解することは、その紛争において感情的知性を使用する必要があるかを判断する際に役立ちます。そう、あなたは感情に由来した効果的な紛争を抱えているかもしれません。しかし、あなたはジャッジとしてプレイヤー間の紛争を解決するだけでなく、これまで述べたようにあなた自身を含むすべてのグループの紛争を解決するために、紛争を解決するのに役に立つスキルを使うことを期待されているのです。

紛争の当事者でない場合、当事者になる可能性があるかを考えてください。感情的知性の鍵となる要素である自己認識もここで役割を果たします。なぜなら、自分の感情レベルに対する認識と、自分のストレスや緊張を増やす可能性があるものにはどういった種類のものがあるかを理解することが重要であるためです。そういった自己認識は状況を悪化させない方法で適応する能力が伴うことがよくあります。そうすることは、あなた自身の原因を認識し理解することを意味します。

よくある紛争管理のモデルの1つが2次元モデルです。私は今回、この2次元のそれぞれの軸について、「結果への懸念」「関係への懸念」という2つを割り当てました。

この方法でモデルを表現すると、個人/グループは競合する2つの要素で関係性がある場合があります。1つ目は結果に対する懸念で、個人やグループの重要性や紛争の対象となっている「実際の項目」や紛争の根源的な要素となっている事柄の重要性を指しています。

例えば、APとNAPがルールの解釈でもめている場合、裁定とは具体的な結果にあたります。一方、関係への懸念は、個人やグループが相手との継続的な関係を持つことの重要性を指します。この例で行くと、APとNAPが友人関係で、友好的な関係を継続したいと考えている場合です。また、AP/NAPはこれまで会ったことがなく、現在進行している関係について、特に何も懸念がない場合もあります。

個人同士の関係性よりも、発生する可能性のある結果を重視する場合、「競合する」視点から紛争にアプローチする可能性が高まります。この方法を用いると、当事者は望むもののためにしっかりかかわる必要があります。この場合、ジャッジコールは当事者にとって有利に働きます。

一方、個人がこの紛争において、相手と継続的な関係を持ちたいと考えている場合、当事者たちは相手に譲ってしまうかもしれません。ジャッジコールすることを求めず、相手の主張を認めてしまうかもしれないのです。こういった解決方法は「勝ち負け」としてみなすことができ、一方が「勝利」し、他方が「敗北」したと言えるわけです。

個人が放蕩に結果や関係性を気にしない場合、当事者たちは単に紛争を避けるかもしれません。この形式は誰の利益にもならず、問題に争う価値も関係性もない、真の意味で「Lose-Lose(両者負け)」というべきシナリオです。当事者が積極的に解決を望まない紛争の経験によって、イベントに参加したくなくなったプレイヤーがこの例にあたります。

ほとんどの人は妥協するというのはよい解決策だと思っています。「Win-Win(両者勝ち)」の関係であるとさえ言われています。私はその神話を打ち破りたいと思っています。妥協とは、関係性と具体的な結果から、望む結果よりも少ないものを得るということです。AP/NAPにとって、お互いの関係を維持し望む結果を得ようとして、そそられるものではありませんが、妥協するでしょう。

ここにゲーム外の例を加えていきます。あなたはマジックフェストでジャッジをするためにシカゴからクリーブランドまで運転しなければなりません。同じようにマジックフェストに参加したい人が、あなたの車に乗りたいとしたとき、あなたは燃料費と高速代で1人当たり50ドルもらえると考えるかもしれません。でも彼らは25ドルしか払いたくないといったらどうでしょう。あなたと彼らがお互いに妥協して37.5ドル払うことで合意したとします。37.5ドルもらい、あなたは途中で彼らを拾い、クリーブランドへの道のりの半分くらいのところであるオハイオ州トレドで彼らを降ろします。これはお互いに誰も得しない状況になります。あなたもお金を失い、彼らは目的地にたどり着けません。妥協とはプロスポーツにおける労働協定のように、協定が解除されるたびに行うストライキやロックアウトを行えるようにするものであり、妥協は良い解決策ではありません。

つまり、妥協からコラボレーションへ移行することが必要です。とはいえ、コラボレーションは実行するのが難しいものです。当事者双方が結果を争う価値があると見なすだけでなく、関係を争う価値があると見なすことが求められます。妥協(または前述の紛争管理戦略)からコラボレーションへ移行するには、真に「Win-Win」になれる解決策が必要となるのです。先ほど紹介したMFでの移動の例でいけば「乗せていく友人の中にガソリン券を持っている人がいて、みんなの支払いを安くできる」や「もう1人乗せていけるため、誰かを誘ってみんなの支払いを安くする」などといった解決策が必要です。

これらの点をすべて踏まえたうえで、こういった紛争管理の方式は、妥協を含めたどの方式もある時点では適切なのです。ジャッジとして関わる紛争の当事者の観点を試し理解する必要があります。なぜならすべての当事者が満足した形の解決策を提示できるように紛争管理のためのツールを使いこなすに役立つ可能性があるからです。当事者が結果に満足していなかったとしても、公平を期したと感じさせるプロセスにしてください。

紛争におけるコミュニケーションにおいては、個人間のコミュニケーションとは異なるということを心に留めておいてください。紛争管理や解決について話す際、特に文化に違いがある場合には注意が必要です。

コミュニケーションにおける非言語的な部分については、普遍的なものではありません。アメリカではアイコンタクトを避ける人は何か隠していると思われるかもしれませんが、他の文化圏では相手に敬意を表していると思われる場合があります。同様に声のトーンや大きさが変わることは、自然なコミュニケーションの一部であり、動揺していることを示すものではない場合もあります。

言語/翻訳に関する問題も、あなたがジャッジとして紛争の解決にあたる際に気を付けるべき問題です。多くのプレイヤーは英語(またはほかの言語)に堪能ですが、ちょっとした言葉の選び方に失敗したり意味の通じる翻訳にならなかったりすることもあるでしょう。自分が発した言葉が意図したとおりに理解されていること(特に自分が母国語以外で発した内容)を確認してください。

特定の文化おいてはジャッジコールは多いかもしれませんし、特定の文化においては上告されることもよくあるでしょう。また、その逆もあり得ます。

最後に、これまで文化の話をしていましたが、個人についても同様です!つまり、個人でもジャッジコールをよくする人しない人、ヘッドジャッジに上告する人しない人、予想しない非言語的な手掛かりを持っている人もいるでしょう。プレイヤーがあなたとコミュニケーションをとるように、あなたもプレイヤーが快適にコミュニケーションをとる方法を見つけるようにすることは大事です。これには、プレイヤーがスムーズに話せるようにして紛争を解決できるようにするために、テーブルから離れてあなたと話してもらうことも一つの方法です。

この項目の最後に挙げる情報は、紛争を超えてどのように行動していくか、ということです。ジャッジとして、あなたは、まず基本的なルールの質問のような単純な紛争を陣す奥に解決できるようになることが望ましいです。しかしどんな紛争かによらず、適切にコミュニケーションを行うことを心がけてください。これは、書面によるコミュニケーションや結果記入用紙に警告を記載する、といったことも含まれます。必ず明確な方法で行うようにしてください。複数のジャッジがいるイベントでは、ヘッドジャッジやスコアキーパーに、あなたがしていることが明確にわかるような方法で行うようにしてください。また、プレイヤーにも明確に伝わるようなコミュニケーションを行ってください。これは建設的な方向に話を向けるのに役立ちます。建設的に話を進めることで、他の人が見たいコミュニケーションをモデル化します。最後に自己改善に肯定的になってください。どんなスポーツの審判もどんなイベントのジャッジも間違わないなんてことはありません。プレイヤーがプレイミスをするのと同じように、あなたも誤裁定を出すでしょう。ミスをしたからと言って、イベントを放り投げてはいけません。継続的な学習と自己改善に努めることが大事です。可能なら、ジャッジコールに対応する際にほかのジャッジと相談しましょう。またはほかのジャッジに「シャドーイング(あなたの後ろについてフォローしてもらう)」してもらい、「ルール」的な観点だけでなく「紛争解決」という観点からもシャドーイングしてもらうようにしましょう。仲間からフィードバックをもらうことは、様々な視点から紛争に取り組むことで、あなたの能力を向上させるためにも非常に大事なことです。何かを行うための別の方法を聞くことは、あなたの方法が間違っていたというわけではなく、将来出会うであろう紛争を解決するための別の道をあなたに提示してくれます。

紛争解決に関する項目の受講内容はこれでおしまいです。最後までお付き合いいただきありがとうございました。このスライドと次のスライドには、参考資料と追加の情報があります。

繰り返しになりますが、紛争解決に関する項目にお付き合いいただきありがとうございました。